Animal Promenade
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「ハロウィンのお話」 中編
早速キリコは、動物村のみんなに話してまわりました。そよ風さんたちのうわさ話も手伝ってか、たちまち動物村全体に伝わっていきました。
動物村の動物たちは、お祭りが大好きです。何でも祝って楽しもうという心の持ち主が多いのです。ですから、みんな結構乗り気。
幸いにも、そよ風さんが教えてくれたお祭りの日まで、まだ少し時間がありました。
「それで、何を準備すればいいんだい?」
村の動物さんがたずねました。
「ん~~~とっキ……」
キリコは、かぼちゃが必要だとか、お化けとか怖い格好をするのだとか、そよ風さんのお話を思い出して話しました。
「そうか、かぼちゃだな。あとは、怖~いお化けとかに変装したらいいんだな?」
「ランタンとかも作るみたいっキ」
「どうやって作るの?」
「そんなのてきと~でいいんじゃねぇか? てきと~で! 要は、楽しんだもの勝ちだ」
「そうね」
動物たちは話し合い、正式にハロウィンのお祭りを動物村でもすることを決めました。
本当の『異世界』のハロウィンは、それぞれのお家を回ってお菓子を貰うようですが、動物村は家々が離れすぎていて、回るのにとても時間が掛かってしまいます。
そこで、更にハロウィンのお祭りについて話し合った結果、その日は、大人も子供も自分が思う怖いものに変装して、動物村の真ん中にある広場に集まり、焚き火を炊いて、みんなでハロウィンの挨拶をし、お菓子を全員に配って、各家庭から持ち寄ったかぼちゃ料理を食べようということになりました。
「とびきりのかぼちゃ料理を作りますわよ」
ゾウマル君のお母さんも楽しげに話しました。
村の子供たちも、ハロウィンについてお話しています。
「怖いものに変身して『トリック・オア・トリート』って言うと、お菓子がもらえるんだっキよ」
「変身? 何に変身するの?」
コマちゃんが、興味津々で聞きました。
「こわ~~いお化けとかっキよ」
それなら絵本で見たことがあると、コマちゃんは思いました。その他にも、魔女だとか、コウモリだとか、この世界のものとは思えないものがたくさん載っていました。
コマちゃんは、動物村の子供たちの中では、誰よりも本が大好きで、このような絵本もたくさん読んでいたので、他の子供たちより少しだけ物知りでした。
「じゃあ、何になるか決めて、早速準備しよう!」
コマちゃんは元気に言いました。
その様子を、うにゃみのむしたちが見ていました。
「うにゃ」
「うにゃにゃ」
「うにゃっ」
なにやらお話をしているようです。どうやら、うにゃみのむしたちもお祭りの相談をしているようですよ。
こうしてキリコたちは、ハロウィンの用意をし始めました。
▲
ハロウィンには、たくさんのかぼちゃが必要でした。しかし、動物村には、そんなにたくさんのかぼちゃはありません。
キリコは北風さんに、動物村の外にある農園まで行って、かぼちゃを採ってきてくれるようにお願いしました。
農園は、コケッコタウンの動物たちが経営する大きな農場で、この動物が住む世界のすべての食料をまかなっていると言われるくらい、沢山の食べ物を作っていました。
コケッコタウンの町長であるコケッコさんは、口が大変悪く、毒舌家なのでみんなから恐れられていましたが、気前はとてもいいのです。
キリコはコケッコさんに頼めば、きっとかぼちゃをたくさん分けてくれるだろうと考えました。
北風さんは「分かった!」というなり、あっという間に吹き去って、あっという間にたくさんのかぼちゃを運んできてくれました。
きっとコケッコさんは、二つ返事で気前良くかぼちゃを分けてくれたのでしょう。動物村の動物たちは、気前のいいコケッコさんに感謝して、それぞれが使う分だけかぼちゃを持って行きました。
それにしても、そのときの強い風といったら。森が丸ごと飛んでいってしまうのかと思うくらいでした。
村の大人たちは、手分けしてかぼちゃのランタンをたくさん作りました。今まで、かぼちゃではランタンを作ったことがありませんでしたが、ランタンがどんなものかは知っていましたので、それをヒントに作ってみました。
かぼちゃをくりぬいて、真ん中にろうそくを立てました。それと、怖い感じが出るように、かぼちゃの表面に怖い顔を彫ってみました。
動物たちは、なかなか上手くいったように思いました。
そうして出来たたくさんのランタンを、広場のまわりにぐるりと置きました。こうすれば、夜も明るく過ごせます。
それから、動物村にある大きな木にお願いして枯れ枝を分けてもらい、広場の真ん中に置きました。焚き火をするためです。焚き火は動物村でもよくしていますので、スムーズに準備が出来ました。どうやら、いつもの焚き火よりも何倍も大きな焚き火にするようです。
▲
お料理は、一家に一品ずつ美味しいかぼちゃ料理を作り、当日持ち寄ることになっていました。
ゾウマル君の家では、かぼちゃスープを作ることにしました。
ゾウマル君のお母さんは、とにかく大きなおなべに、適当な大きさに切ったかぼちゃを、豪快に放り込んでいます。そして、なにやらたくさん加えてぐつぐつ煮込みました。おいしそうなにおいが辺りに漂います。
食いしん坊のゾウマル君は、お母さんの作った美味しそうなかぼちゃスープを、食べたくて食べたくて仕方がありませんでした。でも、初めてのお祭りの為に作ったスープですので、何とか食べるのを我慢していました。
子供たちは、ハロウィンの衣装を作るために、ゾウマル君のお母さんに布を分けてもらい、それぞれが思う怖いものを、時間が経つのも忘れて夢中で作りました。そして、お祭り当日までには何とか作り上げることが出来たようです。
お祭りの準備は大体整いました。
後は、ハロウィンのお祭りの会場になっている、広場の大きな木のテーブルに、動物たちが作ってきた色々なかぼちゃ料理を、手分けして並べるだけです。
しかし、キリコにはもう一つやることがありました。それは、お祭りの始めに村長として挨拶することになったので、何を言うか考えることでした。
キリコは、上手くやれるかとても不安でした。でも、みんなに励まされ、何とか頑張って考えました。そして、あの難しい『異世界』の言葉もすらすら言えるように、繰り返し練習しました。
「何とか言えるようになったっキ。後は本番、上手くやるっキよ」
キリコは自分に言い聞かせるようにつぶやきました。
動物たちにとって、ハロウィンのお祭りは初めてです。一体どんなことになるのでしょう。誰もが期待で胸がいっぱい。
さあ、いよいよ明日はハロウィンのお祭りです!
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