World & Story
動物たちが住んでいる世界のご紹介と、ちょっとしたお話を載せています。
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「ハロウィンのお話」 後編
「コケッコ~~~~~~~!!!!!」
 遠くの方で、コケッコさんの鳴き声が聞こえました。
 朝です。なんて気持ちの良い青空。なんて素敵なお祭り日和。
 いよいよです。いよいよ待ちに待った、ハロウィンのお祭り当日がやってきたのです!
 動物村の動物たちは、子供から大人まで、ワクワク、ドキドキ、ソワソワ。朝から落ち着きがありません。なにせ、動物村で初めての新しいお祭りですからね。
 動物たちは、お祭りが始まるまでに会場を見回って、ちゃんと準備が出来ているか最終チェックをしていました。
 大丈夫、ちゃんと出来ています。後は、今日のために各家庭で作ってきたかぼちゃ料理を、広場の大きなテーブルに並べて、みんなが怖いものに変身するだけです。
 お祭りの時間は刻一刻と近づいてきます。
 動物村のみんなは、それぞれ怖いと思うものに仮装して広場へ集まってきました。

 おや、リボンちゃんともっちいがきたようですよ。二人とも仲良くお化けになっています。
「お~ば~け~だ~ぞ~」
「どう? 似合うかな?」
 二人でお茶目に言い合っています。
 リボンちゃんは、お化けになってもリボンでおしゃれすることを忘れません。「お化けも可愛くなくっちゃね」と言って、白い布にリボンを付けてみたのです。ですから、お化けに変身してもリボンちゃんだと良く分かります。

 コマちゃんは、いっぱいお菓子が入ったかぼちゃを見つけました。それはきっとハロウィンの為のお菓子に違いありません。
「おいしそうだなぁ」
 お菓子を配る時間が、益々楽しみになりました。

 さて、コマちゃんがリボンちゃんともっちいがいる広場に到着しましたよ。
「あっ、コマちゃんだ! お~ば~け~だ~ぞ~!」
 リボンちゃんが、お化けのまねをしながら、コマちゃんに向かってぴょんぴょん飛び跳ねながら言いました。よっぽどお化けの格好が気に入っているようです。
「コマちゃんは、何に変身したの?」
 もっちいがたずねました。
「こうもりだよ。どうかな? 怖いかな?」
 コマちゃんは、大きく手を広げてこうもりのマネをしてみました。
「あはは、うんうん、コマちゃんすごく似合っているよ」
 と、もっちいがコマちゃんをほめましたので、コマちゃんは、ちょっぴり照れくさくなりました。

 おや、ゾウマル君がやってきましたよ。
 なんて可愛らしいかぼちゃなのでしょうか?
「わあ、素敵なお洋服」
 リボンちゃんがうっとりと言いました。おしゃれに敏感なリボンちゃんは、ゾウマル君の格好が気に入ったみたいです。
「お母さんが作ってくれたんだ」
「いいなあ」
 もっちいも、うらやましそうに言いました。
 みんなにほめられて、ゾウマル君は嬉しそうです。

 そこへ、キリコとキナ、うにゃみのむしたちが沢山やってきて、あっという間に広場はにぎやかになりました。うにゃみのむしたちは、こうもりやかぼちゃになっています。
「どうっキ? 『魔女』っていう人だっキよ」
「キナちゃんは、かぼちゃのおばけになったっキナよ」
 そういって、二人とも同じようにくるりと一回転しました。
 魔女もかぼちゃのおばけも、コマちゃんが持っていた絵本に載っていたイラストを参考に作ったようです。
「かわいいね」
「素敵!」
 子供たちの話に花が咲き始めると、うにゃみのむしたちも一斉に
「うにゃ!」
「うにゃあ!」
 と、嬉しそうに声を挙げたのでした。

 ゾウマル母がやってきました。沢山のお菓子が入ったかぼちゃを軽々と持ち運んでいます。
 それは、さっきコマちゃんが見つけた、お菓子の沢山入ったかぼちゃでした。
「さあみなさん、もうすぐハロウィンのお祭りが始まりますわよ!」
 そういいながら、どしん、と沢山のお菓子の入った大きなかぼちゃを子供たちの前に置きました。一つだけではありません。何個も、何個も、並べたのです。
 それを見た子供たちの目が、たちまち輝き出しました。目の前のお菓子に釘付けです。
 大人たちも、次々と集まってきました。もちろん、怖いと思うものに変身しています。わいわい、がやがや、かなりの動物たちが集まりました。
 どうやら、そよ風さんたちもお祭りを楽しもうとやってきたようです。お祭りの始まりを告げるように、ふう、とひとふきしました。
 
 いよいよ、ハロウィンのお祭りが始まります!

 まず、広場の真ん中にある焚き木に火をつけました。動物たちは普段から焚き火をしていましたが、この日はお祭りということで、いつもよりも何倍も大きな焚き火を盛大に炊きました。
 それから、沢山のかぼちゃのランタンに火がともされました。
 それは、広場の周りをぐるりと囲むように置かれています。動物たちは、しばし神秘的な炎を見つめていました。
 すると、今回のお祭りの司会を任された羊のメ~さんが、切り株の壇上に立ちました。
「皆さん、ようこそハロウィンのお祭りへ!」
 一斉に注目が集まります。
「今回の司会を任された、メ~です。どうぞよろしく!」
 パチパチパチ、みんながメ~さんに拍手します。
「それではキリコ村長、ご挨拶をどうぞ」
 厳かにメ~さんが言いますと、
「ふぎっ……」
 キリコはマイクの代わりの枝を持ち、切り株の壇上に上がりました。
 ドキドキ、ドキドキ、上手く言えるでしょうか?
「みんな、今日は『ハロウィン』のお祭りに集まってくれてありがとうっキ! 楽しいお祭りにするっキ!」
 どうやら上手く言えたようです。みんなから拍手を沢山貰い、キリコはホッとしました。
「それではみなさん、乾杯しましょう!」
 メ~さんが言いますと、動物たちは、テーブルの上に並べられたコップを一つずつ取りました。そして、あの『異世界』の不思議な言葉をみんなで一斉に言いました。
「『トリック・オア・トリート!』」
「『ハッピーハロウィン!』」
「かんぱ~~~~~い!」
 楽器が得意な動物たちが、陽気な音楽を奏で出します。あっというまに辺りは賑やかになりました。

 動物たちは、大きなかぼちゃに入ったお菓子を、お祭りに来ていた全員に分け隔てなく配りました。もちろん、沢山のうにゃみのむしたちにもです。
 お菓子を貰った子供たちは大はしゃぎ。この日をどんなに待ち望んだことでしょう。
 食いしん坊のゾウマル君は、すぐ袋から取り出して食べようとしましたが、ゾウマル君のお母さんが「ゾウマル君、まずはお料理を頂いてからになさったら?」といいましたので、ゾウマル君はお菓子を食べるのをあきらめて、美味しいお料理から食べることにしました。

 大きな木のテーブルには、所狭しと沢山のおいしそうなかぼちゃ料理が並べられていました。
 ゾウマル君のお母さんが作った、かぼちゃスープをはじめ、かぼちゃがたっぷり入ったかぼちゃパイや、お口の中ですぐとろけてしまいそうなかぼちゃのソテー。サクっとした歯ごたえが楽しいかぼちゃの天ぷら。カリっとした皮に包まれたジューシーなかぼちゃの春巻き。かぼちゃとチーズをふんだんに使ったスペシャルサラダ。もちろん、かぼちゃを使ったゼリーやアイスクリームやパウンドケーキなどといった、魅力的なデザートも並べられています。
 それらのおいしそうなお料理を、それぞれが好きなものを好きなだけ取ってきて、好きな場所で食べました。

 ゾウマル君とゾウマル君のお母さんは、大きなお皿にお料理をたくさん乗せて、ものすごい勢いで食べていました。

 コマちゃんは、沢山のご馳走に見とれています。あまりに沢山のお料理なので、どれから食べようか迷ってしまいました。
「ん~、どれから食べようかな?」
 しばらくテーブルの上のお料理とにらめっこしていましたが、どこの動物さんがつくってくれたのでしょう? なんと、かぼちゃの煮物の中に油揚げが入っているものがあったのです。
 油揚げはコマちゃんの大好物。もう迷うことはありません。コマちゃんはそのお料理を最初に食べました。

 もっちいは、今日のために自分で作ってきたお餅を、みんなに振舞っていました。彼女はおもちを食べるのも作るもの大好きなのです。今回は、かぼちゃが主役の『カボおもち』を作ってみたようです。
「おいしい!」
「かぼちゃの味がすごくしていいね」
 なかなか好評のようです。

 リボンちゃんは、みんなにお化けの格好を見せびらかしていましたが、その内もっちいに呼ばれて、お料理を仲良く食べました。

 キリコとキナは、ゾウマル君のお母さんが作った、かぼちゃのスープがすごく気に入って、何杯もおかわりしていました。その後、自分達で用意した特別のデザート、バナナとコーヒーを沢山食べたり飲んだりしたのでした。

 動物村のお祭りは、特に決まった出し物などはありません。
 誰かが突然ポンと壇上に躍り出て、得意のものを披露したり、音楽に合わせて、みんなで流行の歌を歌ったり。あるものはランタンを持って広場を練り歩いたり、それを子供たちが追いかけたり。
 わいわい、がやがや、大人も子供も時間を経つもの忘れて、ハロウィンのお祭りを自由に楽しみました。

 時が経つのはなんて早いのでしょう。時計を見ると、子供たちが普段はとっくに寝ているような時間になっていました。
 キリコたちは、折角のお祭りなので、今日は大人みたいに夜遅くまで起きていようと思っていましたが、その内、だんだん眠たくなってきました。
 広場には、集会所となっている木のお家がありました。ゾウマル君のお母さんが、集会所に沢山の子供たちが眠れるような大きなベッドを用意してくれ、子供たちは一晩ここでみんなと一緒に眠ることになりました。そして、お布団に入るなりみんなすやすや、あっという間に眠ってしまいました。
 今日は本当に楽しいことが沢山ありました。きっと良い夢が見られることでしょう。

 子供たちが眠り、フクロウさんが「ホウ」と鳴いて、真夜中を知らせましたが、ハロウィンのお祭りはまだまだ続きます。
 そよ風さんたちも、ハロウィンの夜を満足げに吹き抜けていきました。

おしまい


※このお話を書かせていただく際
「ハロウィン」(2008年10月15日 (水) 22:10の版)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

(別窓が開きます)を参考にさせていただきました。