日めくり音楽帖
良い耳を作れるクラシックからポピュラー作品を
季節に合わせて紹介しています&日々のlessonとか
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北風小僧の貫太郎2021/11/30(火)
1.SO-03G 1/100sec F2.0 ISO80 ±0EV

木枯らし一番が吹くこの時期になると、私の脳内で鼻歌まじり
にエンドレスで流れるのが「北風小僧の貫太郎」
特に冷たい北西の風の日に出歩くと、おーっ、貫太郎が来た!
と嬉しくなる 
作詞:井出隆夫、作編曲:福田和禾子によるこの童謡は、

『元々は1972年に、NHK『おかあさんといっしょ』内の「うた
のえほん」の担当スタッフであった近藤から「子供の演歌があっ
てもいいよね」と水を向けられた井出が、その当時ヒットしてい
たドラマ『木枯し紋次郎』と、自身が幼少を過ごした長野県南佐
久郡の冬景色をイメージしながら作った詞に、福田が作曲した』

とあり、なるほど!子供の演歌だったんだ!と合点がいった
歌だけで映像が見える素晴らしい歌詞!そして私の大好きな福田
和禾子さんのサウンドがいい☆彡
冬は寒くて嫌われることが多いが、そんな嫌われ者の冬を想像力
膨らむ楽しい歌詞にしたのもすごいし、メロディと歌詞の隅々ま
で隙間なくマッチングしてて、ハーモニー進行はさり気ないけど、
どこか懐かしさを感じさせるのが大ヒットの一因かと思う
福田さんの作品は「そうだったらいいのにな」「はみがきじょう
ずかな」「赤鬼と青鬼のタンゴ」など、どれも印象に残るものが
多い

◆北風小僧の貫太郎:北島三郎(明るい演歌の巨匠)
https://www.youtube.com/watch?v=s4jI8XOXHxg

◆北風小僧の貫太郎:堺正章(表現力のレジェンド)
https://www.youtube.com/watch?v=5OmrCFS4NuA


組曲『展覧会の絵』よりプロムナード2021/11/25(木)
1.

「展覧会の絵」はロシア国民学派を代表する作曲家、ムソル
グスキー(1839ー81)の1874年の作品で、友人の遺作展に
刺激されてこの曲を書いたといわれている
10曲の独立した曲でできているピアノ組曲だが、その管弦
楽的な響きに着目する多くの者が、魅力を感じて管弦楽用に
編曲している
中でもラヴェルの編曲(1922年)は特に有名で原曲の持っ
ている音楽的な可能性を縦横に引き出した傑作として、現在
ではほとんどラヴェルのオーケストレーションで演奏される
第1曲目のプロムナードは5拍子と6拍子が交代する力強い
リズムと、一度聴いたら忘れられないインパクトあるメロディ
は多分にロシアの民族的響きが使われている

◆組曲『展覧会の絵』プロムナード:ピアノソロ
https://www.youtube.com/watch?v=AjsVeofiQdw

◆組曲『展覧会の絵』プロムナード:管弦楽
https://www.youtube.com/watch?v=TJd67EBR2R0


空気の精(シルフィード)2021/11/24(水)
1.

「空気の精」は乾いた空気、肌寒い西風を感じさせてくれる
デリケートな作品
多くの作曲家が似たようなタイトルの作品を作っているが
ピアノでよく知られているのは、ブルグミュラーとグリーグ
だと思う
ブルグミュラーの空気の精(風の精とも呼ばれる)は、薄暗い
森の中から空気の精がどこからともなくやってきて、森に遊び
に来た子供たちにちょっといたずらしてるみたい…などと
私のディズニーっぽいイメージを生徒に話すと、共感してくれ
たり、森じゃなくて広い山だと思う、とかいろんな意見が出て
おもしろい
グリーグの空気の精は、ブルグミュラーに比べてもっと大人っぽ
い緊張感とセンスが要る「取扱要注意」な銘品

◆ブルグミュラー:空気の精~18の練習曲より
https://www.youtube.com/watch?v=WeO5fnUb9NU

◆グリーグ:空気の精~抒情小曲集 第7集より
https://www.youtube.com/watch?v=NOIKu_umHVg


シチリアーナ~リュートのための古い舞曲とアリアより2021/11/23(火)
1.
2.

「リュートのための古い舞曲とアリア」は三つの組曲が
ありリュートで演奏される作品ではなく、15、6世紀頃
の管弦楽器であるリュートで、かつて演奏されていた曲
を様々な編成の管弦楽用に編曲したもの
作曲者のレスピーギ(1879-1936)は、近代イタリア
の重要な作曲家で、代表作は「ローマの松」等
レスピーギは1913年にローマのサンタ・チェチリア音楽
院教授になってから、その図書館で昔の作曲家の作品を
調べるのを楽しみとしていた
そのなかから気に入ったものを自己の管弦楽法で編曲し、
近代的あるいは新古典主義風に創作した
この曲もそのひとつで、中でも第三楽章「シチリアーナ」
はシチリア島起源の舞曲をモチーフに、その抒情性と儚さ
が人気を博し、単独でもよく演奏される

◆シチリアーナ:リュートのための古い舞曲とアリア
より 第三組曲 第三楽章
https://www.youtube.com/watch?v=PXfHtYzRZjU


木星~組曲 惑星より2021/11/22(月)
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2.

組曲「惑星」は全部で7曲あり、この「木星」は
その中で最も大規模で構成の変化に富んでいる
晴々とした魅力的な4主題を持ち、いたるところ
に喜びが満ち溢れている
ホルスト(1874-1934)の代表曲であるこの
組曲が1902年に全曲が正式初演された際、
「これらの曲は、諸惑星の占星術的な意義が着想
のきっかけになっているが、その中には標題音楽
は全然ない。そして同名の神話の神とも関係ない。
もしも、曲に対するなんらかの手引きが必要なら、
各曲のサブ・タイトルが広義に解釈されれば、
それで充分だろう。
例えば、木星は普通、喜びをもたらすが、同時に
宗教的な、あるいは国民的な祝祭に結ばれる、と
いう儀式的なたぐいの「喜び」をも表現している。
また、土星は肉体的衰退だけでなく「成就」の意味
もあり、水星は心の象徴である」
と語った。
「木星」の急速な第1部が終わった第2部
(アンダンテ・マエストーソ、変ホ長調)は
一番人気があり、厳粛で民謡風で親しみやすく、
晴れの祝典を想わせる第4主題が堂々と展開される
太陽系の中で大きさ、質量ともに最大の惑星である
「木星」はジュピター・快楽の神とも呼ばれ、
やはり惑星のドンのようなスケールの広さを感じる

◆ホルスト:組曲「惑星」より第5曲 木星
https://www.youtube.com/watch?v=ytQfhqWmr9M


道化師の朝の歌2021/11/18(木)
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2.

情熱などという湿ったものはビニール袋に入れて捨てる
夢などという不純物はさっさと燃やす
思い出などというあいまいなものは一気にちょん切る
内なる声などという実態のないものには一切耳をかさない

とある音楽評論家がラベルの作品イメージ上記のように
評され、誠にごもっとも!と合点している
モーリス・ラベル(1875-1937)フランスの作曲家で
その作品の数々はCool&Hotばかり… 
冷たいホットーコーヒーorあったかいアイスコーヒー?
のような不思議さと洗練さが魅力
道化師の朝の歌は1904~5年に作られたピアノのため
の小品集【鏡】のなかの第4曲目で、単独としてもよく
演奏される
【鏡】は全5曲からなり、演奏も曲想も難曲として有名
ラヴェル自身は【鏡】について「これらは私の和声的進展
の中でもかなり大きな変化を示し、それまでの私の作風に
最もよく慣れ親しんでいた音楽家でさえ当惑したほどだった」
と自伝に残している
「道化師の朝の歌」は、華麗なピアノ書法、雰囲気の移り気
な変化、エネルギー溢れるリズム、そして輝くような色彩的
和声で、道化師を表現している
ラベルの母親はバスク人でラベルもバスク地方で生まれた
生涯母親を敬愛し、スペイン好みだった
1918年にはこの曲を管弦楽用にラヴェルが編曲している
「道化師の朝の歌」 Alborada sel gracioso
アルボラーダ(alborada)とは古いスペイン宮廷の朝に行われ
た行事で音楽を指す他に「暁」「起床ラッパ」の意もある
管弦楽で聴くとより色彩の濃淡まで浮き出ておもしろい!

◆ラベル:道化師の朝の歌 ピアノソロ
https://www.youtube.com/watch?v=wCvIWUBj5yg

◆ラベル:道化師の朝の歌 管弦楽
https://www.youtube.com/watch?v=JPLYhwRx-gA


旅愁2021/11/17(水)

『旅愁』をずっと文部省唱歌だと思っていたが、原曲は
オードウェイだと知って驚いた記憶がある
オードウェイ(1824-1880)は、アメリカの音楽家で
フォスターやワーク(大きな古時計の作曲者)と同時期
に活躍した
本業の医者の仕事をしながら作曲、楽譜出版等の音楽
活動も行った
この明るくて爽やかなメロディに、切ない歌詞がついた
だけで、大変悲し気な曲になるのは歌詞の魔力だと思う
アメリカでの原曲歌詞は、もっと軽い母を慕う歌だった
といわれているが、明治40年(1907年)に日本の詩人
「犬童球渓(いんどう きゅうけい)」が訳詩し、音楽
教科書で取り上げられて以来、急速に浸透し、今では
完全に日本の歌になった
犬童球渓は熊本人吉市出身で苦学の末、東京音楽学校
(現芸大)を卒業後、各地を転々とし、新潟の女学校
勤務時代にこの訳詩を手がけた
故郷を遠く離れた北国から、自身の境遇の苦悩などを
つづったものだともいわれる
また、林芙美子の『放浪記』の冒頭にも出てくること
でも広く知られる
林芙美子著「放浪記」より
私は北九州の或る小学校で、こんな歌を習った事があった
『更けゆく秋の夜 旅の空の わびしき思いに 一人悩む
恋しや古里 なつかし父母』
私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。
父は四国の伊予の人間で、太物の行商人であった。
母は、九州の桜島の温泉宿の娘である。
母は他国者と一緒になったと云うので、鹿児島を追放されて
父と落ちつき場所を求めたところは、山口県の下関と云う処
であった。私が生まれたのはその下関の町である。
故郷に入れなかった両親を持つ私は、したがって旅が古里で
あった。それ故、宿命的に旅人である私は、この恋しや古里
の歌を随分侘しい気持ちで習ったものであった。

◆旅愁:倍賞千恵子さんの歌(発音がすっごく美しい!)
https://www.youtube.com/watch?v=ak7IfDqvaPY
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