日めくり音楽帖
良い耳を作れるクラシックからポピュラー作品を
季節に合わせて紹介しています&日々のlessonとか
2024 - 11





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11月 トロイカ ~四季より~2022/10/31(月)
1.

あこがれに満ちて遠くを見てはいけない
トロイカの馬を追ってはならない
心の中であんなに悲しく語った絃は 永久に消えさせてしまえ
(詩 ネクラーソフ)

トロイカとは、3頭立ての馬ソリのことで、11月ともなると
ロシアは雪におおわれて、もっぱらソリが利用されたので
この月の風物詩としてトロイカを取り上げたといわれる
ネクラーソフの書いた詩の大意は、悲しい心で道を眺めたり、
トロイカのあとを見たりするな
胸を痛めるものを早く永遠に吹き飛ばせ!というもので、
トロイカで走り去った人を思う詩だが、曲の雰囲気同様、
悲痛な感じはない
しかし、北国の冬景色の持つ独特の何か物寂しい気持ちが
こめられている
チャイコフスキーのピアノ曲のなかで、最も有名な曲とし
ても知られ、ピアノ以外の各楽器でも編曲され広く演奏
されている
曲は、まず始めにリズムのはっきりした旋律は、いかにも
雪の中をトロイカが走る様子を思わせ、この主部はロシア
民謡の特徴である自然音階風なメロディ
そして、経過風な句を過ぎて、中間部で鈴の音を交えた
楽しい歌声が響き、第3部はただの主部の反復ではなく、
低音域で扱って、高音で分散和音を奏し、雪の降る中を
静かに去っていく

◆チャイコフスキー 四季より 11月 トロイカ
https://www.youtube.com/watch?v=e0wb61yArME


10月 秋の歌 ~四季より~2022/10/12(水)
1.

わたしたちの庭から 秋が金色の木の葉の飾りを奪った
そして木の葉はゆっくりと 林の中を風にはためいて行く・・・
(詩 A・トルストイ伯爵)

なんとも心細い淋しい風情 色づいた木の葉も散り出し
秋が早足でせまってくる悲しい気分にあふれた曲
(ピアノ曲集「四季」は旧暦設定のため現在の暦では
11月に相当)
「秋の歌」はチャイコフスキー特有の抒情味にあふれた
旋律が、わびしい秋の気分を巧みに描がいている
中間部でほんの少し希望の光が射し込むように、長調の
明るい顔が出てくるが、たちまちもの悲しい気持ちに
押されるかのように静かに終わる
まだ明るいけれども、澄んだ、ひんやりとした秋の
冷涼感にニ短調がよく合う
自然界の秋、生命の秋、この曲の気分に大変近いのが、
悲しみと孤独感の漂う、きわめて私的な抑揚をもった
チャイコフスキーの歌曲『以前のようにまた一人に
なって』だとも言われる
チャイコフスキーが活躍した19世紀後半は西洋音楽が
ヨーロッパ中心部の仏、独、伊から周辺地域へ広がって
いく国民学派の時代でもあった
チャイコフスキーを含むロシア5人組を発端に、やがて
チェコ、ハンガリー等の東欧や北欧、スペインと大きく
広がっていった

◆チャイコフスキー 四季より 10月 秋の歌
https://www.youtube.com/watch?v=qv9rX9AuKoM


行進曲 威風堂々 Op.392022/ 9/20(火)
1.
2.

エルガーの軍隊行進曲『威風堂々』は全部で5曲あり、
5曲中、一番人気のあるこの第1番は1901年に
作曲され、同年10月にリヴァプールで初演された
その数日後のロンドン初演では、熱狂した聴衆の
ために合計3回も演奏させられたらしい
また、時の英国国王エドワード7世はエルガーに、
「君は、いずれ世界中に知れ渡る”ふし”を作曲したね」
という御言葉を賜ったという有名な逸話が残っている
国王が絶賛したのはトリオ(中間部)の美しいメロディの
ことで、さらに国王はこれに歌詞をつけるよう勧めた
エルガーはこの言葉に応えてエドワード7世の
『戴冠式領歌(作品44)』の第7曲終曲にA.C.
ベンソンの詩をつけて『希望と栄光の国』として、
この旋律を使った
この『希望と栄光の国』はのちに独立した歌曲に編曲され、
イギリスの第2の国歌として愛唱されている

イギリス人はよくシェークスピアから言葉を引用するが、
この曲の原題『Pomp and Cir-cumstance』もシェイク
スピアの『オセロ』第3幕オセロのセリフ
『Pomp and Cir-cumstance of gloriouswar
(輝かしい戦いの盛儀盛宴)』からとられている

ミリタリー・マーチの開始に相応しい勇壮な序奏から
一気に気分を高揚させてくれ、その後もグイグイ引っ張ら
れ、そして悠々と登場するトリオの威厳、風格は、まさに
王者、勝者をイメージさせる黄金のメロディは歴史そのもの
のエリザベス女王の圧倒的な存在感にも通ずるだろう

◆エルガー 行進曲 威風堂々 Op.39
https://www.youtube.com/watch?v=l0JRE9AD7II


9月 狩りの歌 ~四季より~2022/ 9/ 5(月)
1.

さあ今だ! 角笛が鳴っている!
狩人たちはすでに構えた
猟犬は飛び跳ね 前へ行こうとする
そのうちに 今にもとめておくことが
出来なくなりだしている・・・
(詩 プーシキン)

9月 狩りの歌は明るいト長調 角笛が響き、
犬も勇み立つという、これから出かける狩の
楽しさを歌ったプーシキンの詩を標題とする
狩の合図をするような角笛風のモチーフに始まり、
その他いたるところで角笛を思わせる進行が出て
メンデルスゾーンの狩りの歌を思わせる
オクターブが多く使用されエネルギッシュで勇敢な
感じから中間部は駆り立てるようでありながら柔和
さものぞかせる

◆チャイコフスキー 四季より 9月 狩りの歌
https://www.nicovideo.jp/watch/sm28593389

◆画像:キツネ狩り


8月 とり入れ ~四季より~2022/8/11(木)
1.

今 男も女も子供も 茎がそんなにも背高く
のびた穀物を刈っている
それらを束にして村に運んでいく
そして一晩中
車のきしむ音がきこえる…
詩:コルツォーフ

収穫の喜びに満ちた活気ある様子を表現した
作品で、8分の6拍子と4分の3拍子が入り混じった
ようにも聴こえ、とり入れ作業のせわしなさが
浮かぶ
中間部は穏やかで静かな歌が入り、ホッと一息つくが
また激しい労働のようすが始まり、華やかに終わる
メランコリックなロ短調で印象的なリズムがおもしろい
タイトルを知らないで聴いたら 激しい戦いを強いられる
ヒーロー、ヒロインのテーマになりそうなコケティッシュさがいい☆

◆チャイコフスキー 四季より 8月 とり入れ
https://www.youtube.com/watch?v=Ru_xMKmUHks


7月 刈り入れの歌 ~四季より~2022/ 7/ 7(木)
1.

~四季より~ 7月 刈り入れの歌
私の手はむずむずする 打つために振り上げよ!
風よ 南から顔に吹いてくれ!…
詩:コルツォーフ

素朴な民謡風の明るくて楽しく、ジプシー風なところも
ある魅力的な作品
牧歌的な導入部が終わると中間部は、ますます力強く
刈り入れ作業に励む働く人々の熱が増してくる
短い中にも暑い日差しの中で健康的に作業がはかどる様が
くっきり見えてくる
最後の方の伴奏に出てくる3連音がとても弾きにくいが
チャイコフスキーらしい音楽描写がいい!

◆チャイコフスキー 四季より 7月 刈り入れの歌
https://www.youtube.com/watch?v=Kr9VZPb15s4

◆画像:四季を作曲した頃のチャイコフスキー


水の戯れ2022/ 6/24(金)
1.
2.

水のきらめきやその動きは印象主義の画家たちが好んで
取り上げた題材のひとつだが、ラヴェルはそうした
一瞬一瞬変化する美しい水の戯れを大胆で繊細な手法に
よって、溢れるような詩情を表現している
「水の戯れ」はラヴェルの名前を最初に高めた作品で、
同時に音楽史上でも、印象主義による最初の作品という
記念すべき傑作
まだパリ音楽院に在学中だったラヴェルは、フランスの
作曲家にとって最も重要な、ローマ大賞というコンクール
に毎年参加したが、その度に落選していた
ラヴェルの革新的な音楽が保守的な審査員に理解できな
かったためだとも言われている
1901年(ラヴェル26歳)に作曲されたのがこの曲は
先輩ドビュッシーが印象主義による作品「版画」を書く
2年前のことだった
5分少々と短いながらも、ラヴェルのピアノ音楽の「味」
が凝縮されているが、リストの「エステ荘の噴水」から
影響を受けているとも言われる
ドビュッシーも「エステ荘の噴水」からのヒントで
「水に映る影(映像第一集)」または「水の反映」とも
訳される曲を書いている
ドビュッシーの「水の反映」は、ありのままの自然な水の
動きを書いているのに対し、ラヴェルの「水の戯れ」は、
制御された噴水、ファンタジーを連想させる作品

◆水の戯れ
1901年作曲、パリ音楽院時代の恩師ガブリエル・
フォーレに献呈
形式:ソナタ形式に近い循環形式

◆水の戯れ:辻井伸行
https://www.youtube.com/watch?v=mFyhcACV02c